もったいない

2015年05月20日

 何年か前に上野の東京国立博物館に展覧会を見に出掛けたおり、上野公園でホームレスらしい人達に混じって、背広姿でアタッシュケースを持った若いサラリーマン風の人たちが並んでおりました。なんだか判りませんでしたが、私も列の最後列に並びました。前に進むに連れて列が二つに別れ「ライスかパン」の声が掛かりましたのでライスの列を選びました。列の先頭にたったところで、ライスとカレーを発泡スチロールのお皿に盛りつけたのを手渡されました。量は私が通常食べる分の2/3位で、食べてみると立ち食い蕎麦屋さんのカレーライス程度の味でした。誰が公園で給食しているのだろうと見回しましたら、ベンツのトラックの蔭で青年が携帯電話で連絡をしていました。私が賞味期限逼迫の食品を企業から提供して貰って、食に不自由している方々に配っているNPOセカンドハーベストの存在を知るきっかけでした。

 2010年の推計によりますとわが国の年間の食品廃棄物量は約1,900万トンです。これはわが国が一年間に輸入する食糧の量とほぼ同じです。国内生産量と輸入量から計算しますと、日本人は一人一日当たり2、473キロカロリーを供給されているのに、実際は1,898キロカロリーしか摂食していません。この摂食熱量は敗戦前後の食糧の供給が逼迫した飢餓状態の時代よりも低いのです。この差の575キロカロリーはどこに消えたのでしょうか。ゴミとして廃棄されているのです。1,900万トンの食品廃棄物のうち、本来食べられるのに廃棄されている可食部分の「食品ロス」は年間約500〜800万トンと推定されております。

 「食品ロス」の量は、家庭からは200〜400万トン、食品の流通過程や食品加工の過程や外食産業などの事業者からは300〜500万トンと言われております。家庭からの「食品ロス」の原因は、食べ残しや調理の失敗、買い過ぎによる賞味期限切れなどです。事業者からの「食品ロス」の原因は、曲がった胡瓜のような規格外品、賞味期限切迫による返品、売れ残り、お客様の食べ残し等です。加工食品では、賞味期限までの3分の1を過ぎた商品は、小売店が引き取らない商習慣がありこれが「食品ロス」の大きな原因です。

 食糧が乏しかった頃を経験した高齢者のいる家庭の「食品ロス」率は若い人たちだけの家庭よりは低い傾向にあります。外食産業ではお客様が食べたいメニューを注文するレストランやそば屋の「食品ロス」率は低く、結婚式場や宴会、旅館など個人の希望と関係のないメニューが出たり、見栄の為に必要以上にお料理を並べたりする場所では「食品ロス」率は高いです。

 「食品ロス」800万トンはお米の国内生産量に匹敵し、食品廃棄物量約1、900万トンは、世界で実施されている食糧援助量(約600万トン)の約3倍にもなります。開発途上国の人口急増と、中国、インドなどの人口の多い国々の生活水準の向上に伴い畜産物およびその餌となる穀物への需要が高まり、価格が高騰しております。経済力が高まるにつれ新興国や開発途上の国々の人達が、先進国の人たちと同じより美味しい食べ物を食べたくなるのは当然です。

 しかも地球温暖化が進むにつれ、気候変動が大きくなり世界各地で干ばつが起こり、今まで世界の穀倉といわれた国々でも生産量が減ってきております。日本は大豆等の穀物や鮪、蛸などの水産物の購入競争で、中国などの新興国に買い負けているのです。たんに「もったいない」と言うだけではなく、私達が日々食品を大切にし、無駄なく食べることは日本の存亡に関わるのです。

食と健康のコンサルタント 渡邉 憲一