デブとヤセ

2015年06月10日

 太った人は貫禄があり裕福な人だと尊敬される時代から、自分の体重も管理出来ない経営者、管理者としては失格者だと見なされる時代になりました。事実アメリカではジャンクフードが大好きな、あるいはそれらしか食べられない労働者達に超肥満の方々が多いようです。日本ではデブのうちに入る私でも、アメリカに行くと適度に太っている部類に入ります。私が現役時代に働いていたアメリカの会社のニューヨークの本社の食堂で、肥満を嫌ってお昼に毎食薄いパン2枚の間に缶詰めの鮪のオイル漬けを挟んで水を飲んでいる営業マンがおりました。

 私は野菜と果物も食べることを薦め、鮪は海の中の食物連鎖の頂点にいる魚だから、体内に有機水銀が濃縮され高濃度で蓄積されている。従って集中的に食べることは危険だと忠告しました。事実妊婦は一週間に2回以上鮪を食べてはいけないと言われるようになりました。もっとも今は鮪も高価ですから頻繁に食べられないので余計な心配はすることはありません。要は身体に良いからと言って、特定の食べ物だけを食べるのではなく、いろんな食べ物を偏りなく食べることです。

 日本人の一日の平均摂食熱量は、現在は敗戦前後の食糧の供給が逼迫した飢餓状態の時代よりも低い約1,900キロカロリーだと前に申し上げました。これは太ることを嫌ってやせ過ぎている不健康な若い女性や、正しい食生活を理解出来ず気付かないうちに「栄養失調」になっている人々、老化により食が進まず低栄養状態になっている高齢者の数が増えているからです。

 わが国は地球上の200を越える国や地域の中では、経済的に恵まれた国です。今の所世界中から穀物や肉類・乳製品や美味しいワイン等の食品を購入し輸入しています。その一方で、重量で表すと輸入食糧と同じ重さの食べ物をゴミとして捨てています。贅沢な食生活を送りながら、栄養失調の状態にある人達が多数とは危ないことです。それだけではなく所得に大きな格差があって6人に1人は経済的な理由で栄養的に良質な食事を摂れていない厳しい事実も忘れてはなりません。

 先日、日本栄養・食糧学会と日本学術会議が主催する「健康寿命の延伸」と題する市民公開講座を聴講しました。「健康寿命」とは他人の世話にならないで自立して自分の身の回りの事は自分で出来る(要支援や要介護にならない)生活を送れる寿命の長さのことで、「平均寿命」より男性は約9年、女性は約12年少ないのです。健康寿命を長くすれば健康で元気な高齢者になれるのです。
 
 この講座の結論は、「健康寿命を伸ばすには、30〜60歳までは、過剰栄養によるメタボ対策に留意してあまりデブにならない、60歳以上は低栄養による身体の脆弱化を防ぐことに尽きる。このギアチェンジを間違うと、デブを怖れるメタボ対策のダイエットが、要支援、要介護状態を誘発して、健康寿命を逆に縮め、高齢になって死ぬ前に長い期間寝たきりになるリスクを高める」です。
 
 健康寿命を伸ばすには、若い時からたんぱく質を十分に摂って身体の老化を遅らせることです。最近はたんぱく質の摂取が不十分な為、血清アルブミン値の低い人が高齢者だけではなく若い人達(特に女子)にも増えているのに講師の方々は口を揃えて警鐘をならしていました。メタボ対策から老化対策に移行する適齢期は、男子60歳、女子50歳だそうです。肉類は2日に1回は食べること、肉と魚介類の割合はほぼ一対一。前にも申し上げた栄養のバランスのとれた食事をするのが健康寿命を伸ばして、死ぬまで元気で過ごせるコツです。栄養失調になるような偏った食事を摂りながら、機能性食品や健康補助食品に依存するのは健康寿命を縮めて寝たきり老人になる早道です。健康上偉大なるデブはもちろん危険ですが、ヤセ(痩せ過ぎ=低栄養状態)はもっと危険です。少しふっくらとした身体が男性、女性共に健康上理想的です。

食と健康のコンサルタント 渡邉 憲一