TPPと私達の食べ物

2015年10月30日

食料自給率がカロリーベースで40%を下回ったといわれてから長い年月が過ぎています。私達が毎日摂取している約2,000キロカロリーのうち、約60%の1,200キロカロリーを外国からの食料に頼っているのです。戦争や気候の大変動で海外から食料を輸入出来なくなったら日本国民の大半は餓死するしかありません。食料と水の確保が国防の最優先事項です。ねじ曲げた憲法解釈で自衛隊が海外で戦争が出来るようにする以前に食料自給率を上げる手立てを考えて実行すべきだったのです。

海外の多くの国々から沢山の食料を輸入しているのに、日本全体では手づかずの食品や食べ残しなどの本来食べられるのに捨てられている「食品ロス」が約642万トン、その半分は家庭から出ています。横浜市では家庭から出される燃やすごみの中には約8万7千トンもの「食品ロス」が含まれており、市民一人当たり年間約23キロになり、金額にすると約1万7千円にもなるそうです。(広報よこはま2015年10月号)
 
最近小麦製品、乳製品、卵・肉、ワイン等の食料品の価格がじりじりと上がっております。これは日銀が紙幣を刷りまくったり、国債を買いまくってゼロ金利政策を続けており、円ドル相場が1ドル80円から120円へと円が対ドルで50%も安くなった影響です。1ドルで輸入した商品はかっては80円でした。今はそれが120円になっているのです。チョコレートやワインなどの嗜好品はともかく、小麦や大豆、玉蜀黍や魚粉などの飼料などの基礎食料資源を100%近い比率で外国に頼っております。人口1億人を超える国なのにこんなに低い食料自給率では、私達の生活と国の安全を外国に握られているのです。

また国産の野菜や果物の価格も高止まっております。天候不順や水害の影響もありますが、野菜や果物の出荷量が減少しているからです。これは作り手の高齢化と減少が原因です。農業は儲からないので農業従事者の数は急減し、農業従事者の平均年齢は68歳を上回りました。新規に農業に参入する39歳以下の人の数は年間1万人を下回っております。

5年にわたったTPP交渉は大筋妥結されたと公表されました。しかし、TPPのメンバーの中で最大のアメリカでもこのTPPの妥結案に強力に反対する勢力があります。TPPの発効にはまだ解決すべき難問が残っています。たとえこれから数年かけてメンバー各国の議会で批准されTPP協定が発効しても、ただちに全ての農畜水産物の輸入関税がゼロになるわけではありません。TPPにより食品の輸入関税が引き下げられる前に、このままでは日本では田畑を耕したり、牛や豚や鶏を飼ってくれる人々は居なくなってしまいます。

食料自給率の低下は敗戦後の農政の大失敗の成果です。政府は慌ててTPP対策のための補正予算を言い出しました。ウルグアイ・ラウンドの時のように根本策もなくお金をばらまくだけでは失敗の上塗りになります。北米や豪州のような大規模農業の規模と比較したら、北海道などの一部を除けば趣味の園芸程度の小規模農業です。この悪条件下で食料の自給率を上げ日本列島の緑と水と農村社会を守る農業を盛んにするには、「一億総活躍」と国民全員で知恵を絞り、解決策を探り着実に実行しなければいけません。

食と健康のコンサルタント 渡邉 憲一