エンゲル係数

2017年02月20日

先日家計支出に占める食費の割合であるエンゲル係数が30年前と同じ水準に戻ったと報じられました。敗戦直前、直後の飢餓状態の時代にはエンゲル係数は高く、その後朝鮮戦争のお蔭で急速に経済が回復し、成長した時代にはエンゲル係数は下がっておりました。

エンゲル係数が上がった理由として、円安と天候不順や海水温の上昇、モノよりコトを楽しむ外食でのプチ贅沢、それに共稼ぎ世帯が10%も増えたことによる食の外注化、即ち冷凍食品の普及やお弁当やお惣菜を購入する「中食」の利用が増えたからです。これは自宅での食事と外食の中間なので「中食(なかしょく)」と呼ばれています。

食品の自給率がカロリーベースで39%を切った日本は、農産物や多様な種類の食品を大量に輸入しています。お米を含む日本の穀物自給率は約60%と割と高率です。また金額ベースの食糧自給率は65%です。国内での野菜や果物の生産はかなりあり、金額表示では自給率は高くなりますが、カロリーの低い野菜、果物はカロリーベースの自給率アップには貢献しないのです。食糧自給率をあえてカロリーベースで表示しているのは、低い食糧自給率で国民を脅して、予算を獲得しようとする農水省の陰謀だとも言われています。

製品を輸出したり、海外の工場で生産している自動車メーカー等は 円安で円建では見かけ上儲かっていますが、円安では輸入品の価格が高くなり、特に輸入農産物・食品の値上りは日々の食費の高騰に繋がり消費者を苦しめています。原材料や部品を海外から調達しているメーカーも儲からなくなっております。価格は据え置かれているがいつの間にか内容量が減ったり、小麦、大豆を原料とする食品の価格が敏感に値上がりしています。

天候不順による日照不足や水害は、国内産の野菜や果物の価格の急騰を招き高止まりのままです。海水温の上昇は餌となる海草類やプランクトンの急減をまねき、烏賊や秋刀魚、鰯、鰊、鯖等の大衆魚の漁獲量が急減しております。泣きっ面に蜂ですが、日本近海に近い公海で、中国、韓国、台湾の漁船が根こそぎに漁獲する無秩序な漁法が水産資源の減少に拍車を掛けております。水産物の価格の急騰も食費の高騰の大きな一因です。

家電や車や家屋等モノを買って満足するよりも、食事や旅行、文化活動などのイベントを楽しむコトに費用惜しまない傾向が強くなり、食事でもプチ贅沢で雰囲気のよいお店で食事を楽しんだり、高いケーキを購入しています。共稼ぎ世帯やお一人様世帯が増えて食の外注化が進み、お惣菜屋さん、デパ地下、スーパー、コンビニなどのお惣菜の購入、お弁当の購入が増えており「中食」の普及もまた食費高騰の一因となっています。

私達の食生活が質が向上したからエンゲル係数が上がったのではありません。アベノミクスやマイナス金利でも、大多数の働く人達のお給料があがらず、年金は減らされ、介護や医療費の負担は増やされなど社会保障費の削減で、先行きの暮らしの不安が大きいので、日々の暮らしの財布のひもは固いのです。一方で円安や野菜や果物、お魚の供給が減った結果、食材のお値段が上がったので日々の食事を節約しても食費が増えているためにエンゲル係数が上がっているのです。

また8人に1人の子どもが、貧乏の為に十分な食事を取れないでおります。これはアジアやアフリカの開発途上国の話ではありません。日本の現状です。食事や健康について正しい知識を持たないで、肥満を極度に嫌って栄養失調になっている若い女性の数も多いのです。このままでは彼女らは健康な子どもを産めず、中年になると必ず骨粗鬆症に罹り、ピンピンコロリ(死ぬまで元気で長生きをして大往生)ではなく、折角平均寿命が長くなっても、健康寿命が短くなり晩年は寝たきりのネンネンコロリになります。同様に食事や健康に関する高齢者の知識不足が高齢者の栄養失調を引き起しています。

農水省によりますと、わが国では年間に約2、800万トンの食品廃棄物が出ており、まだ食べられるのに廃棄されている「食品ロス」は約632万トン、ホテルやレストランなどでの食べ残しが半分、家庭から半分と言われています。宴会の最初に乾杯した後の30分間は席を立たずに料理を楽しみ、「お開き」の10分?15分前には席に戻って、「食べきりタイム」にする「3010(さんまるいちまる)運動」があります。家庭でも食材を冷蔵庫の肥やしにしないよう、また残った料理を一工夫して食べ切るよう努めましょう。私達は食材の大半を海外に頼り、毎年約500億ドル(約5兆5千億円)もの貴重な外貨を使って輸入しているのです。

食と健康のコンサルタント 渡邉 憲一