食品の安全と安心

2017年06月30日

東京ガスが長年有害物質を排出してきた工場跡地である豊洲を、納税者である都民に詳しく説明せずに都民の納得を得られないまま、秘密裏に東京ガスとの「水面下」の交渉で買収にこぎつきました。その経緯は都議会の百条委員会でも明確にされず、証言者を偽証で訴えるとのことですが、改選を迎えた都議会は未だに訴訟していません。高濃度に汚染された土壌を浄化する為に膨大な税金を投入したにも拘わらず、石原元知事が公約した安全基準以下の水準に納めることは出来ませんでした。

一般に「基準値」は科学的根拠に基づいて決めていると思われていますが、実際は決定のどこかの段階で推論やある程度のリスクに目をつぶって決めています。例えば、残留農薬の1日許容摂取量は、動物実験で影響が出なかった量に、人と動物との差を10倍、個人差を10倍と推論して、あわせて100分の1に決めています。この推論で安全係数を10倍X10倍で100倍にした科学的な根拠はありません。「基準値」はそれが決められる過程では、それぞれの前提条件や不確実性が存在しています。個々の「基準値」が決められた過程を理解せずに「基準値」を超えた、超えないと議論しても数字を弄ぶ不毛な議論に過ぎません。

豊洲については専門家委員会が地上と地下水とは別であるから「安全」との結論を出しました。責任問題に絡むとみなされる専門家の説明は信頼されません。素人には判らない狭く閉ざされた世界にすむ「専門家」が、いつのまにか社会全体の規範から逸脱し、自己の利益や、自己保身の為に世間を欺く傾向が強くなりました。原発ムラに潜む御用学者はその典型です。「安全」が「安心」に結びつくには、「科学的安全」のエビデンス(根拠)を確かめ、その根拠を一般の人達に判りやすく丁寧に説明してくれる専門家が必要で、その専門家は一般の人達に信頼されていなければなりません。

リスクは完全にゼロにすることは出来ません。どの程度のリスクがあり、どのような対応策があり、いくらのコストが掛かるかと言った資料をもとに、「安全」を「安心」に繋げる努力が必要です。老朽化し、耐震性がなく、外部とは遮断されずに鼠などの害獣の出入りが自由な非衛生な築地市場から、出来るだけ早く豊洲市場に移るべきだと思います。「食の安全」を担保する為に必要や追加工事を行い、都知事が「安全宣言」をして、科学的根拠のない「風評被害」の排除を行なうべきであります。築地市場の跡地をどう活用するかは、中央卸売市場の「安全」、「安心」とは別問題です。

消費者は食品添加物や残留農薬、食品中の放射性物質、遺伝子組替え食品などに対する危険性を、正しい資料を正しく理解することなく、過敏に過大に受け取っており、科学的根拠もなしで恐れています。食品安全の専門家は、消費者だけではなく食品業に従事する人達に、正しい知識、資料、情報を提供して、それらを判り易く、丁寧に説明して、食品の安全と安心により積極的に寄与すべきです。

一方私達消費者は、食と健康に関する情報を受け取る場合には、1)目の前の情報に無批判で飛びつかずに、立ち止まって、違う意見を探してみましょう。極端な情報はまず切り捨てます。 2)「事実」と「解釈」を混同しない。マスメディアを使っての宣伝では、業者は巧みに手を替え品を替えて視聴者を混同させるように励んでいます。 3)インターネット上の情報は、偽情報や偏った情報で溢れているので、命に関わる食や健康の問題では、ネットの利用は避けた方がよろしいです。

食と健康のコンサルタント 渡邉 憲一