なぜ有機農産物やその加工品を選ぶのか

2017年08月03日

私達はなぜ有機農産物やその加工品を選んでそうでない商品よりも高い代金を払うのでしょうか。地球全体から見ますと人口の急増や工業化の進展につれて、土壌や水や空気など環境の汚染が進んでいることへの懸念や、化学肥料および抗生物質や成長ホルモン等も含む動物用医薬品や除草剤、抗病原菌製剤などの農薬の残留に対する懸念からでしょうか? 有機農産物やその加工品は、そうでない商品よりは美味しいとか汚染度が低いとかの迷信があります。

成長優先の時代には、多量の化学肥料で土壌中の生態系が崩れると病虫害が大発生、その対策に農薬を使うとゆう、化学肥料と農薬がセットになった増産体制が進みました。確かに大量の化学肥料を使い、農薬である除草剤や、害虫を駆除したり農作物を犯す病原菌の駆除の為に使用した農薬が食品中に残留しているリスクは心配の種です。

世間には「有機」を売りにしている農産物が高く評価されそれに比較的高い価格で売られています。私達は「有機」を売りにしている農産物、加工品を無条件で信じても良いのでしょうか? 消費者の関心が土壌汚染などの環境問題に向けられるようになりますと、きちんとした基準もないのに勝手に「有機」を表示して売られていた農産物、加工品がありました。「完全有機」などあいまいな表示や偽物「有機」が横行しましたので1999年に、第三者機関が認証する「有機JAS認定制度」が導入されました。

その基準によりますと、3年以上無農薬、無化学肥料で有機肥料を使った田畑などを第三者機関が認証、「有機JAS」と表示、1年以上3年未満は「転換期間中」と表示されます。「有機JAS」の認証を得るには3年以上、無農薬、無化学肥料の土壌で有機肥料で栽培するという条件の他、害虫の防除や農産物の輸送、選別、洗滌、貯蔵、包装などにも管理基準があり、コストが掛かっています。

有機JASは国際基準に準拠して制度を作っていますので、認証を受ければ海外産の農産物や加工品でも、有機JASマークを付けて輸入、流通、販売が出来ます。一方国産の農産物や加工品が有機JASの認証を受ければ、海外へ輸出出来る可能性が高まります。海外へ農産物や加工食品を輸出するには、GAP(Good Agricultural Practice:よい農業の実践)、HACCP(Hazard Analysis Critical Control Point:危害分析重要管理点)および輸出相手国の食品関連法規に適用しなければならないという壁が存在します。

化学肥料、農薬を多量に散布すれば、土の中のミミズや植物に有用な微生物が絶滅し、堆肥のような有機物を入れないので土が固まってしまい、植物の根の成長が妨げられます。おいしい野菜をつくるには、まず土壌作りです。熟成した堆肥や土壌改良剤を農地に入れて土壌を栄養分や水や空気が通り易い多孔質(ポーラス:Porous)にします。そうすれば窒素、リン酸、カリの主要化学肥料や亜鉛や鉄といった微量成分を、土壌分析をした上で過不足無く供給できます。

土壌に入れる堆肥などの有機肥料が汚染されているか否かは多くの場合検証されないままで使用されています。きちんと検査された無機の化学肥料および土壌改良剤のほうがより安全です。また狭い日本では自分の農地だけを無農薬にしたら、まわりから害虫や病害菌が集まりとんでもないことになります。家庭菜園で無農薬栽培を経験された方々は痛感されていると思います。過度な農薬の散布を避け、必要最低限の農薬を使用する「低農薬」栽培の方が勝っています。

野菜の味は、品種、土壌や気候などの環境、農家の腕できまります。有機栽培や無農薬栽培を採用したからと言って、その農産物が必ずしも美味しくなるとは限りません。「有機」の名前だけに惑わされずに、農産物やその加工品がどのような手順・過程で生産されたかを確認出来るトレーサビリティ(Traceability:追跡可能性)を活用出来ることがより大切です。生産者や販売者の顔が見えるのが理想です。今はインターネットの発達でそれが可能になりつつあります。

食と健康のコンサルタント 渡邉 憲一