読み書きソロバン

2018年05月10日

AI(人工頭脳)の「東ロボくん」が大学模試に挑んで成績上位20%に入りました。しかしAIは質問文からキーワードを拾って検索する手順で機械的に答えを探すだけで、質問の意味は判っていません。ビッグデータを使ってAIは、将棋や囲碁では次の一手を超高速で計算して指せますが、何故その手を選択したかは説明出来ません。採用試験や昇進試験でAIに判定させる組織も既に地球上に存在しているようですが、何故その人物を高く評価したかをAIは説明出来ません。ビッグデータは過去のデータの蓄積ですからそこから導きだされる社会現象に対するAIの結論には、過去のしがらみが強く残る恐れもあります。

「日本の中高生の多くは、教科書の文章を正確に理解出来ていない。」と新井紀子教授著「AI vs 教科書が読めない子どもたち」<東洋経済新報社>が話題になっています。
「読解力」がAIにも劣る人材は、AIに仕事を奪われて当然です。ぐっちーさんも「単純な話でも誤解する人、誤読したまま反論する人、どうも読解力のない人が世の中に沢山いると感じている。」とAERA2018.4.16号で述べています。

その原因は何でしょうか? 核家族になって、お爺ちゃん、お婆ちゃんなど世代の異なった人達と接する機会が少なくなり、世代間のギャップを埋めにくなったことや、共稼ぎ家庭が増えて家族の会話が減っていることも原因の一つだと思います。SNSに時間を奪われ友達とか仲間とかとの会話も減っています。またSNSでは極めて短い文章でやり取りしているので舌足らずの表現で誤解を産んでいます。本や新聞、雑誌を読む機会が減ったことがその大きな原因ではないかと思います。

言葉を交わしたり、文章を書いたり読んだりする能力は、地球上に住む数千万におよぶ生物の種の中で、人類にだけに与えられた能力です。その極めて貴重な能力を活かし切れないでいるのは勿体ない話です。人一人の経験は極めて微々たるものですが、読書は時間や空間を超えて多様な知識を与え、大勢の他人の経験を学ぶ機会を与えてくれます。

AIが産業構造を劇的に変えるこれからの時代では、国境を超えてたやすくカネ、モノ、ヒトが行き来するグローバル化時代だからと言って、「国際人」を養成する為に小学校で英語教育をしたり、ICTの時代だからとプログラミングの教育をする前に、「読み書きソロバン」に力を注ぐ教育が幼児や小学校の低学年に益々大切になるのではないでしょうか? 江戸時代からの寺子屋での「読み書きソロバン」で養われた国民の学力が、日本の明治維新後の近代化を推進した基礎学力です。まず母国語の読解力を高めるのが喫緊の問題です。ソロバンは計算力、暗算力などの数学的能力を高めるだけではなく、集中力を高め、脳力をも高めます。

グローバル化が進み、ICTが社会のあらゆる分野に浸透する時代では、他人の言葉、文章を正しく理解した上で的確に判り易く自分の考えを相手に伝える能力が益々大切になります。「読解力」が乏しければ、国語力だけが劣るのではなく、計算の能力があっても算数の文章問題は解けず、理科、社会、道徳などのの教科書も読めません。教科書を読めることを前提とした教育は根本から崩壊です。十分な「読解力」がなければ世の中のあらゆる問題に立ち向かうことは不可能です。

地球上にはいろいろな人種、言語、宗教、文化が多様な人達が住んでいます。お互いの違いを認識し、異なった意見を持つ「異見」の人達を敵視せず、自分たちと異なった能力を持つ「異能」な人達を受け入れ、自分たちの常識からはみだした想定外と思われる「異端」な人達とも仲良く交流する為にも、まず生まれ育った国の母国語を十二分に活用出来るように努めるべきです。母国語を自由に操ることが出来るようになってから、必要となった外国語を学んでも遅過ぎません。

食と健康のコンサルタント 渡邉 憲一